技術2015年11月26日
株式会社安川電機(代表取締役会長兼社長 津田 純嗣)は、世界で初めてGaN*1パワー半導体を搭載したアンプ内蔵サーボモータを開発しました。今までサーボドライブシステムを構成していたサーボモータと サーボパック機能を組み合わせ、サーボドライブシステムのさらなる小型・高効率化を実現しました。
アンプ内蔵サーボモータと現製品であるサーボモータ+サーボパック
製品生産現場では、省スペース化や生産性向上のため、生産設備の小型化や動作の高速化・高精度化が求められています。
今回、これらのニーズにお応えするために、当社最新製品の機能・性能を持ち合わせたアンプ内蔵サーボモータを開発しました。
アンプ内蔵サーボモータは、サーボドライブシステムのサーボパックの機能とサーボモータを一体化した製品です。GaNパワー半導体の採用でサーボパックのアンプ部(コンバータ部等は除く)を大幅に 小型化したことで、従来のサーボパックのアンプ部と比較し、体積比1/4を実現しました。これにより、お客様の設備の小型化、省配線による配線費用の削減に貢献します。機械・装置の位置決めの超高速化や、省エネ化も実現します。
現製品サーボシステムとアンプ内蔵サーボモータ使用時のシステムの違い(8軸接続時)
アンプ内蔵サーボモータを実現するためには、モータからの振動や熱が直接アンプ部に伝わるので、これまで以上に振動対策や効率の良い冷却構造が求められます。
振動対策については、冷却器を含むアンプ部筐体の小型化が必要であり、冷却器の小型化に寄与する低損失動作が可能なGaNパワー半導体を採用しました。また、GaNパワー半導体は高速スイッチングが可能なため、高周波駆動による内蔵受動部品の小型化を行い、振動、熱に強い受動部品を選定できるようにしました。さらに、3次元の高密度部品配置を行った構造とし、アンプ部筐体を小型化しました。
冷却については、自然空冷を基本とした冷却構造技術を用い、結果、小型・高効率なアンプ部を実現し、モータと組み合わせることによりアンプ内蔵サーボモータを実現しました。
代表機種仕様(参考)
入力電圧:280Vdc 定格出力:100W 定格トルク:0.318N・m
定格回転速度:3,000min-1 瞬時最大トルク1.11N・m 最高回転速度:6,000min-1
サイズ:130mmx40mm×40mm
1回転内24bit絶対値エンコーダ搭載 通信機能搭載
◆主な特長
①高効率化:サーボドライブシステムの損失を12%低減
低損失なGaNパワー半導体により、高周波駆動でもアンプ部とモータ部の損失を低減し入出力効率を高めました。
②小型化:サーボパックのアンプ部(コンバータ部等は除く)と比較し、体積比1/4
高放熱構造を採用。また高周波駆動により受動部品の小型化を実現しました。
③静音化:耳障りなスイッチング騒音を削減
可聴周波数域を超えた高周波駆動により、サーボモータから発する高周波騒音を削減します。
④省エネ化:回生エネルギーの有効利用
モータ制動時の回生エネルギーは、従来のサーボシステムでは、抵抗等で無駄に消費させるか、回生コンバータなどの製品が別途必要でした。アンプ内蔵サーボモータは、直流リンクで複数台接続が可能なことから、サーボモータを複数台使用する多軸システムでは、回生エネルギーを他のアンプ内蔵サーボモータでドライブエネルギーとして利用可能です。
⑤防水構造:水を使う環境でも使用可能
モータ部と同様にアンプ部も防水構造(保護構造IP67)としました。防水コネクタとの組み合わせで、水が降りかかる環境でも使用可能です。
なお、本アンプ内蔵サーボモータは、12月2日(水)~4日(金)まで東京ビッグサイトで開催されるSCF2015にて展示する予定です。
2017年までに製品化を予定。
*1:GaN(窒化ガリウム,Gallium nitride)は、Ga(ガリウム)とN(窒素)の化合物です。
GaN材料を使用したパワー半導体は、Si(けい素)半導体と比較して、高温での動作が可能、絶縁破壊電界強度が高い、さらにSiC材料を使用したパワー半導体より飽和電子移動度が高い、電子移動度が高いなどの高速スイッチング性能の面を含む優位性からパワー半導体としての応用が大いに期待されています。
【お問い合わせ先】
株式会社 安川電機
技術開発本部 開発研究所
パワーエレクトロニクス技術部
樋口 雅人
TEL: 093-571-6317
FAX: 093-571-6028