コントローラ

Control Packシリーズの誕生

時代背景

今日のプラント用システム電気品には、マイクロプロセッサをどれくらい使用しているだろうか? あらゆる所に何気なく使用され、おそらく数百個のレベルは超えるであろう。当社の産業用システムコントローラControl Packシリーズの誕生は、マイクロプロセッサの誕生と機を一にしている。論理素子としてTTL(トランジスタ回路をIC化)全盛時代の1972年に、電卓用として開発されたマイクロプロセッサ4004がインテルより発表された。その後に産業用として実用にたえる8080が1974年に発表され、電気品が大きく変わる予感を覚えた。

一方産業界では、1960年代後半から70年代初頭にかけて、生産性の向上、コスト低減の目的から生産設備の大形化、自動化が急ピッチで進められてきた。1973年の第一次オイルショックを契機として省エネルギー、省資源、低操業率下での経済性(変種変量生産)の追求が新たな要求として生じてきた。

当社のシステム用電気品としては、1970年から73年にかけて可変速ドライブ装置を体系化した、いわゆるVarispeedシリーズが完成した時期である。一方情報制御を構成する製品としては、トランジスタを主素子とするロジトロン、TTLを主素子としたMemocon-16、Memocon-SCが主体であった。

Control Pack シリーズの誕生

鉄鋼・公共水処理設備が大形化し、高度な自動化の採用で複雑化してきたことにより、従来の構成製品では容量不足、機能・性能不足、コスト高のため新たなニーズを充足することが難しくなってきた。またシステムの信頼性の確保、保全性の確保、危険分散などを実現するため、従来の個別制御の積み重ねからシステム全体の一貫制御へと基本思想の変換が必須となってきた。

これらの産業界のニーズを受けて、機能分散型の階層構成を実現することを意識し、また台頭してきたマイクロプロセッサと半導体メモリを主素子に使用することを基本方針とし、産業用エレクトロニクスコンポーネントの整備計画が1974年に策定され、Control Packシリーズと命名された。

Control Pack CP-310

Control Pack
CP-310

DDCシステム世界一号機の納入

この整備計画に基づき、北九州市皇后崎下水処理場殿納めの大規模集中監視システム向けにマイクロコンピュータCP-310マルチ構成等、鉄鋼プラント向けに回転機械の異常監視装置CP-410、プログラマブルアナンシエータCP-520、製紙プラント向けに自動紙継装置CP-910が次々に開発された。

CP-320プログラミングパネルと制御盤

CP-320プログラミングパネルと制御盤

更に製品開発は加速され、1979年までに情報伝送装置CP-240、大規模長距離伝送CP-220、主幹制御装置CP-320、入出力装置CP-820、CRT操作監視装置CP-530が開発され、1979年には新日鐵君津殿のNo.2連続鋳造設備に、トランジスタ使用のベクトル制御インバータによる全AC駆動とこれら開発品を適用したDDC(ダイレクトディジタル制御)システムが世界1号機として納入された。

特に主幹制御装置CP-320は、4ビットスライス演算素子4個とマイクロプログラミングによる当社独自の各種演算命令を内蔵した16ビットCPU搭載を実現した。また、CPUのデュアル構成及びオンラインチューニングを可能にして、産業界へ大きなインパクトを与えた。

100%シェアによる業界No.1地位の確立

以後、競合他社の同様な製品は当社のControl Packシリーズを手本に製作されるほどになった。これら競合他社の製品を押しのけて、当社のControl Packシリーズは国内高炉プラント用システム電気品の100%シェアを占め、業界No.1の主幹制御装置の地位を確保することができた。

これらControl Packシリーズが誕生した時期は、アナログ回路からディジタル回路へ転換、マイクロプロセッサの利用のためのハードウェア技術とソフトウェア技術の習得、開発環境(アセンブラ、コンパイラなど)の自作など新規技術取り込みの一大転換期であり、システム設計・製品開発・システム試験の各技術者が一丸となって挑戦と革新に邁進した時期でもある。あまりにも技術格差が大きく、開発者たちは、オーダ納期と連動した厳しい製品開発工程を余儀なくされた。その成果として鉄鋼プラント、上下水道プラント、紙・パルプ及びフィルムラインなどあらゆるシステムにVarispeedシリーズと共に適用され、産業用システム電気品としてControl Packシリーズが産業界の注目を集めるに至った。

Control Packシリーズの誕生においては、当時の製品企画・開発リーダであり、生みの親である元取締役・故三浦博孝先輩をはじめ、多くの諸先輩方が技術資産を残され、その技術が今日の世代まで脈々と受け継がれている。

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