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下水水質シミュレータAquaNavi®を製品化
-キャリブレーション機能を充実して水質向上と省エネに貢献-

新製品2003年7月22日

 株式会社安川電機(取締役社長 中山 眞)は、下水処理水質を高精度で予測できるシミュレーショ ンソフトAquaNaviを製品化しました。窒素・りん排出規制や温暖化抑止のための省エネなど、今後強まる規制に対処するためのツールとして自治体やコンサルタント会社に9月21日から販売を開始します。豊富なキャリブレーション機能と使いやすいインターフェイス画面により、現場へのシミュレーションの普及を促進し、水環境の健全化と地球温暖化抑止に貢献します

  • https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2003/07/09.jpg

1.製品化のねらい

 水環境保全への要求が高まる中、閉鎖性水域に対して第5次水質総量規制が施行されており、今後下水処理場の放流水質に対する規制が一段と厳しくなります。下水処理場では、窒素・りん除去が可能な高度処理プロセスの導入(施設の改造)および運転方法の変更などが検討されています。

一方、京都議定書発効により下水処理場の電力消費削減も課題となっていますが、これまで事前検討の手段がなく、窒素・りん除去のためにエネルギー消費が多くなりがちでした。

 このような相反する規制の強化に対応するために、下水道関係者からは、設計や運転方法の事前検討を机上で簡単にできる支援システムが求められています。当社は、これらの要求に応える有力なツールとなる「下水水質シミュレータ AquaNavi」を開発しました。このソフトは当社と東京都下水道局殿と(株)日水コン殿とで共同開発したもので、国際水学会(IWA)が提唱した活性汚泥モデルASM No.2d*1を採用しています。

2.特長

2.1 豊富なキャリブレーション機能により高精度なシミュレーションを実現

以下のように豊富なキャリブレーション機能を備え、下水処理場毎に最適な水質シミュレーションを可能としました。

 

(1) モデルパラメータ*2自動設定
精度の高いシミュレーション結果を得るためには、モデルパラメータの最適設定作業が必要です。当社のAquaNaviでは、従来深い専門知識がなければ設定出来なかった数十個のモデルパラメータを自動的に設定する機能を有し、専門家でなくとも容易に設定を行う事ができます。パラメータ自動設定に必要な水質データは日常的に処理場で得られるデータが使えるよう配慮しています。また、各パラメータには経験や文献を基に上下限値を設けています。自動設定された値を標準値や上下限値と比較することで、その妥当性を検討することもできます。

 

(2) 流入水分画
下水を処理する微生物のエサである流入有機物を、微生物の取り込みやすさで数種類に分類することも、モデルを適用するうえでは重要なことです。AquaNaviでは有機物濃度(CODMn、BOD、TOC)をCODCr*3に換算し分画する方法として、標準値または実測値を選択できますので、処理場の実情にあった方法で分画を行うことができます。また、呼吸速度の測定よりも簡便に分画値が得られるSTOWA*4方式も活用できます。

 

(3) 無酸素ゾーンの設定
モデルでは生物反応槽内は溶存酸素濃度(DO)が均一な完全混合状態と仮定していますが、実際には分布があり不均一な部分が存在します。IWAモデルは酸素で収支がとられているため、DOの設定は非常に重要です。AquaNaviでは、好気槽内にDOがゼロの領域(無酸素ゾーン)の割合をユーザが設定可能であり、より実情に合ったシミュレーションが可能です。

 

(4) 最終沈殿池で脱窒した硝酸濃度の設定
反応槽で生成した硝酸は最終沈殿池へ流出し、そこで数mg/Lほど脱窒することがあります。りん除去にはこの脱窒が影響します。AquaNaviでは、最終沈殿池で脱窒される硝酸の濃度をユーザが設定することで、りん酸の計算精度を向上できます。

 

2.2 風量計算による省エネ支援機能

ブロワの消費電力は処理場の大部分を占めるといわれていますが、好気槽のDOは余裕を見て高めに設定されていることがあります。AquaNaviでは、水質を維持しつつDO(すなわち風量)をどこまでさげられるかなど、ブロワの省エネ運転に活用できます。これにより処理場の電力量と二酸化炭素の排出量を低減できます。

 

2.3 操作を簡単にするHMI

(1) シミュレーションを行うプラントを自動作成により簡単に構築できます。
(2) わかりやすい操作案内(ナビ)に従いながらシミュレーションが行えます。
(3) Excelによるデータの入出力が行えます。
(4) トレンドグラフ、槽(タンク)別グラフ、3次元グラフを使って、水質データをグラフィカルに把握できます。

 

3.主な用途

(1) 施設の設計検討(現状施設の処理能力、設計変更、特に高度処理対応のアップグレードなど)
(2) 運転方法の検討(DO低減または水質維持・向上のための運転方法や運転条件の変更など)
(3) 水質監視
(4) 教育・プレゼンツール

4.販売計画

(1) 販売開始:2003年9月21日
(2) 販売目標:20セット/年
(3) 価 格 :300万円より(基本ソフト)

[文中語句説明]

[文中語句説明]

*1 IWA活性汚泥モデルASM No.2d:
IWA(国際水学会:International Water Association)が提案している活性汚泥数学モデル。曝気槽で生じている主として生物化学的反応を数学的に記述したもの。ASM No.2dは有機物、窒素、りんの反応を表し、りん蓄積細菌の脱窒能力を含む。
「出典:活性汚泥モデルの実務利用に関する検討報告書 活性汚泥モデル研究会編」
*2 モデルパラメータ:
活性汚泥モデルに定義された、生物反応の動力学定数や化学量論係数で、モデルのバージョンにより異なるが60個程度あり、IWAが推奨値を提唱している。
*3 流入水の有機物濃度:
COD Crは重クロム酸カリウムで測定したCOD(化学的酸素要求量)。ほぼ完全に有機物を酸化できるのでIWAではこちらを推奨しているが、日本では廃水規制により日常的には採用されておらず、COD Mnが使われている。
COD Mnは過マンガン酸カリウムで測定したCOD。
BODは生物学的酸素要求量で、微生物が有機物を生分解するのに必要な溶存酸素量。
TOCは全有機炭素で、有機物中に含有される炭素量を表したもの。
*4 STOWA:
オランダ応用水研究財団が提唱した流入水の分画手法で、BODの経日変化の測定がベースとなっている。
なお本ソフトは東京ビッグサイトで開催される下水道展’03東京 [ 2003年7月22日(火)〜25日(金) ] に出展します。

 

[お問い合わせ先]
株式会社 安川電機
システム工場 技術部 新規事業担当
課長 杉井 隆造
Tel. (0930) 25-2108
Fax. (0930) 23-3402

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