テクニカルレポート 2026 No.5
食品製造現場の持続可能な自動化への挑戦
~変種変量生産に対応するAIロボットと人協働ロボットの活用事例~

キーワードデータ活用, 多品種少量生産, 人協働, Easy to Use, ロボット, 食品
関連製品 MOTOMAN NEXT, AlliomWorks VegeFruPutter, CoboPal3(MOTOMAN-HC35搭載)

2026年8月7日

1. はじめに

食品製造現場では、人手作業に依存してきた工程に対してロボット活用が進められてきましたが、ロボット導入後の運用負荷や商品切替え時の再調整工数増加などから、十分に活用されないケースも少なくありません。特に中食・惣菜分野では、多品種生産や短い商品サイクルへの対応が求められ、商品切替え時の再ティーチングや調整が運用上の大きな負担となります。対象物のばらつきや商品変更への柔軟な対応が難しい点が、自動化の継続利用を阻む要因となっています。
したがって、自動化に求められるのは、単なる人手作業の置換えではありません。作業時間の短縮や段取り替えの負荷の軽減、NG品への柔軟な対応も求められます。このような背景から、「導入できるか」ではなく「使い続けられるか」が重要となっています。
当社は、ソリューションコンセプトi3-Mechatronics※1を基軸に、モーション制御技術とAIによる認識・判断を融合したAIロボティクスを展開しています。“Easy to Setup”(短期間で立上げ可能であること)、“Easy to Use”(現場で日常的に扱える操作性)の2つを両立することで、従来は人の判断に依存していた工程の継続運用が可能な自動化を目指しています。本レポートでは、FOOMA Japan 2026に出展した食品製造現場の持続可能な自動化を実現する3つの事例を通して、AIロボットと人協働ロボットによる新たな自動化の可能性を紹介します。

※1 ソリューションコンセプトi3-Mechatronics
「新たな産業自動化革命の実現」に向け、これまでのソリューションにデジタルデータのマネージメントを加えた新たなソリューションコンセプト。

2. 事例の詳細と技術・製品の特長

2.1 AIロボットの事例

2.1.1 事例1 トッピング工程(MOTOMAN NEXT)

1)自動化における課題・ニーズ

中食製造のトッピング工程では、見本写真や作業指示書をもとに人が状態を判断しながら盛付けや充填を行っています。充填量は数値化されているものの、一品一様の食材を扱うため、作業をデジタルで指示できず、自動化が困難な工程です。
また、特定の条件下で自動化しても商品切替えで再ティーチングを行う必要があるなど、現場での運用負荷が大きく、エンジニア不在でも運用できるソリューションが求められています。

2)適用事例

ハンバーグ弁当へのソース充填
図1 ハンバーグ弁当へのソース充填

本事例では、MOTOMAN NEXTを用いたハンバーグ弁当へのソース充填デモを実施しました(図1)。見本写真と実際の弁当画像を比較し、未充填箇所をAIが認識し、対象物の状態に応じて判断・動作を自律的に行うソリューションを構築しています。商品切替え時は、見本写真、充填する食材、必要に応じてロボットが持つツールを切り替えることでロボットが柔軟に作業します。従来は、ロボットの動作を変更するためには、ロボット技術者によるティーチング作業が必要でしたが、見本写真を登録することでロボット自身が動作変更に対応するため、ロボット技術者による再ティーチングの負担を軽減でき、現場担当者でも扱いやすくなりました。
タブレット上で見本写真の登録、充填パターンおよび充填量の設定を行えるGUIを備えており、現場での簡単な操作でロボットを動作させることができます。

3)製品・機能の特長と技術の詳細

MOTOMAN NEXTは、AIによる「認識・判断」とロボットの「計画・行動」を一体化した構成が特長です。状況に応じて最適な動作を生成するため、ティーチングへの依存を削減できます。また、ロボット自身が最適な作業手順および軌跡を生成することで、対象物のばらつきに応じた柔軟な動作を実現します。AIにより、大きさや形が異なるハンバーグを認識します。さらに、ハンバーグに焦げがある場合には、ソースを掛けると焦げが隠れると判断し、ソースを掛けないようにします。このように、人が行っていた状態判断の一部をAIが担い、対象物の状態に応じて作業を変更します。本技術はソース充填に限らず、トッピング工程における人の判断を伴う様々な作業の自動化へ展開可能です。

2.1.2 事例2 青果投入工程(AlliomWorks VegeFruPutter)

1)自動化における課題・ニーズ

図2 球状青果(例)りんご・玉ねぎ・トマト
図2 図2 球状青果(例)
りんご・玉ねぎ・トマト

青果の加工工程では、球状で向きのある青果(図2)の状態を人が判断し、向きをそろえる場面が多くあります。たとえば、りんごでは梗窪(りんごのヘタの窪み)の向きをそろえて皮むき機やスライサに投入しますが、形状や状態のばらつきが大きく、人の認識と判断に依存するため、自動化が難しい工程の一つです(図3)。

向き調整を要する工程例図3 向き調整を要する工程例
2)適用事例

株式会社エイアイキューブ※2のAlliomWorks VegeFruPutterを活用し、コンテナにばら積みされたりんごを取り出し、向きをそろえて配置する作業を自動化しました。AIビジョンでりんごの特徴(梗窪や底部)を認識し、把持可能なりんごを優先してピッキングし、梗窪が上になるように配置することができます。
さらに、りんごの特徴を認識できないときは別の角度から再撮像し、把持に失敗したときは自動的にリトライします。また、一度で向きをそろえることが難しい場合は、りんごを持ち替えて再調整します。このように、自律的に状況を判断しながら作業するAIロボティクスが、人手に依存していた整列作業を自動化し、品質の安定化と歩留まりの改善に寄与します。

AIによる認識
図4 AIによる認識

※2 株式会社エイアイキューブ
当社グループ会社。FA現場へ信頼性の高いAIソリューションを提供。

3)製品・機能の特長と技術の詳細

本製品は、ソフトウェア、学習済みAIモデル、GUIをパッケージ化した製品です。AIモデルは学習済みの状態であるため、時間と手間がかかる学習を行うことなく、すぐに使用することができます。このAIモデルを使用したAIビジョンにより、ばら積みされた対象物の位置と特徴を認識します。その結果を本製品ソフトウェアで処理してピッキングの優先順位と把持方向を決定し、MOTOMAN NEXTのパスプランニング機能を用いて対象物の把持位置までの最適な動作経路を自動生成します。
AIロボットを扱うには高度な専門知識が必要で、現場導入までに時間がかかるという印象を持たれがちですが、ハンドやカメラなどのハードウェアを準備し、本製品を活用することで、AIモデルの学習などに要する時間と手間を削減し、現場導入に必要なエンジニアリング作業を短縮できます。簡単な操作で品種ごとの条件設定や、認識結果・保存データのモニタリングをすることができるGUI(図5)を備え、現場で扱いやすいAIロボティクスを実現しています。

簡単に操作できるGUI
図5 簡単に操作できるGUI

2.2 人協働ロボットの事例

2.1.1 事例3 パレタイズ工程(CoboPal3:MOTOMAN-HC35搭載)

1)自動化における課題・ニーズ

食品製造や物流の現場では、重量物搬送が人の大きな身体的負担となっています。特にパレタイズ工程では、すでに多くの現場で人協働ロボットが稼働していますが、搬送能力の拡大、安全性の向上、ロボットのスリム化が求められています。特に粉体の原料袋や一斗缶など重量が20kg以上になるケースで対応が困難なことがありました。

2)適用事例

株式会社FAMS※3の「CoboPal3」は、人協働ロボットMOTOMAN-HC35を搭載したパレタイズパッケージです。
デモでは一斗缶の搬送作業を行い、安全かつ安定したハンドリングを実現しました。

一斗缶パレタイズ
図6 一斗缶パレタイズ

一斗缶は、内容物によって重量が20kg以上になることや、天切缶では把持方法に配慮が必要になることが課題です。CoboPal3では、MOTOMAN-HC35の可搬能力と用途に応じたハンドを組み合わせることで、これらの搬送に対応しています。その他、一斗缶の内容物を撹拌機などに投入する作業の自動化も実現しています。
FAMSでは、人協働ロボットを搭載したCoboPalシリーズを展開しています。CoboPal3は、MOTOMAN-HC35を搭載したパッケージで、ロボットを初めて導入する現場にも適用しやすく、これまでの豊富な導入経験を生かし、短期間で安定稼働まで立ち上げることができます。

※3 株式会社FAMS
当社グループ会社。Food & Agriのお客さまへメカトロニクスの力で創造したソリューションを提供。

3)製品・機能の特長と技術の詳細

MOTOMAN-HC35は、可搬質量35kg、最大リーチ2030mmの人協働ロボットです。可搬質量とリーチの向上により、従来対応が難しかった重量物や広い作業範囲への適用が可能となります。
特に以下の点で従来機種から進化させています。

4面パレット対応
図7 4面パレット対応

手首部の許容モーメントを大きくし、ハンドやワークを含めた実作業への対応力を向上
長いリーチにより、4面パレット配置などの効率的なレイアウトに対応(図7)
スリムでコンパクトなアーム設計により、周囲との干渉を抑え、狭い領域へのアクセスを実現
新開発のトルクセンサーにより、衝突時などのロボット反応速度を向上させ、安全性を強化

MOTOMAN-HC35を搭載したCoboPal3では、パレタイズに限らず用途が拡大しており、今後も様々な搬送・ハンドリング工程への適用範囲を広げていきます。

3.おわりに

本レポートでは、3つの事例を通じて、食品製造現場における新たな自動化の可能性を示しました。当社は、“Easy to Setup”、“Easy to Use”を両立したソリューションにより、安定生産、継続運用が可能な自動化を提案し、製造現場の持続的な発展への貢献を目指しています。
食品製造では、対象物のばらつきが大きく、人の判断に依存する工程が多く残っていますが、当社は、モーション制御とAIによる認識・判断を融合したAIロボティクスや人協働ロボットにより、現場ですぐに活用できるソリューションを展開していきます。
今後は、データ活用や装置連携と組み合わせることで、食品製造における自動化の高度化を進めていきます。当社はAIロボティクスを軸としたフィジカルAIの力で、食品製造現場の課題解決と自動化の高度化に取り組んでいきます。将来的には、これらの技術が食品製造における標準的な自動化手法の一つとなることを目指しています。

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