テクニカルレポート 2022 No.1
モータ開発を支える設計技術~振動・騒音を予測する連成解析~

背景と課題

サーボモータは、電磁力およびステータやロータといった構造部の振動モード(どのように振動しているかを示す振動の形状)などの要因により、振動や騒音が発生します。これらは、サーボモータを用いた装置の生産品質や装置が設置される生産現場の環境に悪影響を与えます。そのためサーボモータの振動・騒音の低減が求められます。したがって、設計段階で振動・騒音を予測する解析技術が重要となります。
サーボモータの振動は共振によって増大します。共振は、加振力(構造物に振動を起こさせる力)と構造部の振動モードの周波数が一致すると発生します。

背景と課題

設計段階でこのような現象を予測するには、設計したサーボモータの3Dモデルを用いて、構造解析や音響解析といったシミュレーションによって振動や音を確認します。これらの解析で精度よく振動・騒音を予測するためには、加振力と振動モードの振動要因が組み合わさって起こる共振現象を再現できる、非常にレベルの高い解析技術が求められます。

ハンマリング試験

まず、どのような振動モードで共振が起こるのかを調べるため、当社サーボモータを用いて、ステータの振動モードおよび稼働時の振動・音を測定しました。
ハンマリング試験では、サーボモータをハンマーでたたいて加振力を与え、ステータの振動モードとその周波数を確認しました。

ステータは円環2次、3次、4次に変形する振動モードを有し、これらの振動モードで共振を起こす可能性があります。
また、実稼働試験では、サーボモータを駆動した時の振動および音を測定し、この測定したデータを分析し各周波数成分の振動・音を確認しました。分析した結果から、ステータが変形する円環2次モードと加振力が共振し、振動・音が増大することが分かります。
したがって、サーボモータの振動・騒音を低減するためには、ステータの円環2次モードと共振する振動・音を予測する解析技術が必要となります。

ステータの振動・騒音を予測する解析技術

1.電磁界・構造・振動・音響連成解析

ステータの振動・騒音を精度よく予測するため、電磁界・構造・振動・音響解析を連成した解析技術を構築しました。以下は解析フローです。

解析フロー

電磁界・構造・振動・音響連成解析のポイントは3つあります。

(1)
簡略化技術
解析にて精度よく振動や音が予測できたとしても、解析の計算時間がかかると設計検討に活用することができません。そこで、計算時間低減のために、導線が巻かれたコイルや薄い鋼板を積み重ねたステータコアは一体物の形状に簡略化します。また、簡略化モデルを用いて実機の現象を再現するため、異方性を考慮した材料物性値を設定します。これらの簡略化技術によって、計算時間は1日以下で精度よい解析結果を得ることができます。
(2)
組立て・加工の応力を考慮
モータの生産工程では、圧入や焼きバメ、ねじ締結などの加工によってモータに応力が発生します。これにより剛性が変化し、振動モードや固有振動数に影響します。そこで、静的構造解析にて組立て・加工の現象を再現した応力を計算し、この応力を固有値解析や周波数応答解析に反映することで、振動モードや固有振動数を精度よく予測することができます。
(3)
モータ稼働時に発生する加振力を考慮
モータを動かすことで発生する電磁力が、振動を起こす加振力となります。実機を再現した電流波形を用いて電磁界解析で加振力を算出し、周波数応答解析に反映することで、振動モードと加振力の共振を解析で予測することができます。

2.連成解析適用事例

振動・音を測定したモータに連成解析を適用し、実測と解析の振動および音を比較し、連成解析の効果を確認しました。

実測と解析結果の比較(振動)

■振動モードと周波数
ステータの円環2次モードの振動モードを確認することができ、この共振周波数は誤差1%と高精度で予測できました。
対象のモータはフレームとコアが焼きバメで締結されており、この加工によって発生する応力を静的構造解析を用いて算出し、実機の状態を解析上で再現することで、精度よい結果を得ることができました。

実測と解析結果の比較(音)

■振動と音
円環2次モードの振動および音圧の最大値は誤差5%以下で予測することができ、円環2次モードでの共振現象を捉えることができています。振動モードを正確に予測でき、電磁界解析で算出した加振力を用いることができる電磁界・構造・振動・音響連成解析によって、実機の共振現象を再現でき、精度よく振動と音を予測できることが分かります。

以上の結果から、構築した連成解析技術によって、これまで技術的に正確な予測が困難であった加振力と振動モード、これらの振動要因が組み合わさる共振現象の予測が可能となりました。

3.解析技術の汎用性

固有振動数の実測と解析の比較

解析では精度を向上するため、解析条件や材料物性値などを調整します。モータの機種が変わると構造や使用する部品が変わり、調整した解析条件が対応しなくなり、解析精度が低下することが課題として挙げられます。
構築した解析技術の汎用性を確認するため、容量や構造が異なるサーボモータ4機種の振動モードの実測・解析を実施しました。おおむね固有振動数の解析誤差は10%以下と精度よい結果が得られました。機種Cの円環2次モードは誤差がやや大きい結果が得られています。この誤差要因は、調整した材料物性値であり、この調整が課題であると考えています。

また、振動・騒音が問題になりやすい数kHzの円環3次モードについてもよい精度を得られていることが分かります。
構築した解析技術は精度よく振動・騒音を予測できることに加えて、汎用性も有しており、サーボモータの設計に幅広く活用しています。

モータ開発の設計技術の今後

電磁界・構造・振動・音響連成解析を設計に活用することで、ステータの振動モードや振動・騒音を精度よく予測することができました。モータの振動・騒音はステータ以外にロータからも発生することから、連成解析技術をロータの振動・騒音の予測に展開していきます。また、ステータの解析技術は課題を解決する取組みを継続し、設計技術を更に向上させます。

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