| キーワード | 小型化, 高効率化, 省エネ, 再エネ, インバータ |
| 関連製品 | 太陽光発電用パワーコンディショナ Enewell-SOL P3H |
2026年6月30日

政府の第7次エネルギー基本計画において、国産エネルギーである再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入する方針が明記されるなど、太陽光発電の更なる普及が求められています。
一方で、2012年のFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)導入以降、国内における太陽光発電設備は急速に普及してきましたが、設置から10年以上が経過した現在、パワーコンディショナの更新需要が本格化しています。また、近年は系統連系技術要件の変更やEMI規制強化など更新時に求められる条件が複雑化しています。
このような背景から、当社は従来製品Enewell-SOL P2AおよびP2H(以下P2A/P2H)の後継機として、新型パワーコンディショナEnewell-SOL P3H(以下P3H)を2025年11月に製品化しました。
本製品は高速自家消費制御機能を標準搭載した200V級三相絶縁型9.9kW/10kWのパワーコンディショナです。新設の自家消費システムと既設設備の更新の両方に最適な仕様で、かつ絶縁型業界最高効率※197.4%を実現、お客さまの発電収益を最大化します。
※1 当社調べ 2025年10月時点

図1 絶縁型パワーコンディショナ 接続イメージ
P3HはDAB(Dual Active Bridge)回路※2による高周波絶縁方式を採用しており、低圧三相配電系統の接地方式によらず外部カップリングトランスなしで直接接続できます(図1)。非絶縁型パワーコンディショナでは、接地方式によっては外部トランスが必要であり、設備コストや設置スペース、ならびに外部トランスでの電力損失が課題となっていました。
P3Hでは高周波トランスを内蔵することでこれらを解消し、システム全体の効率向上と省資源化を実現しました。また、絶縁により漏えい電流を抑制できるため、安全性の向上や不要な発電の停止を防ぐことができます。
一般に、パワーコンディショナ単体の変換効率では劣ることが多い絶縁型でありながら、P3Hは非絶縁型をしのぐ最高効率97.4%を実現しました。また、P3Hは高速自家消費制御を標準搭載しており、電源系統への逆流(逆潮流)が発生しないように、建物内で使用する消費電力を監視しながら発電電力をうまく制御することで、発電した電力を効率よく、最大限活用できます。
外部冷却ファンを使用しない自然冷却方式を採用。筐体はIP55相当の密閉構造で重塩害地域への設置も可能です。
また最新の系統連系技術要件※3に対応しJET認証※4も取得済みです。かつ、近年要求の高まっているEMI対策※5では工業用レベルより厳しい家庭用レベルの基準であるCISPR11(第6.2版)ClassBに適合しています。

図2 PV1000置換アタッチメント
従来製品P2A/P2Hと互換の取付寸法・外形サイズで、設置場所の再検討をせずにそのまま置き換えできます。P2シリーズより更に前の製品であるPV1000や一部他社製品もオプションの置換アタッチメントにより取付けねじ位置を変更せず置き換えできます(図2)。
容量はFIT開始時に需要の高かった9.9kW/10kWを用意。入力電圧範囲は従来製品の仕様を包括し、太陽電池回路の組替えが不要です。
また、アルミニウム筐体の採用や高効率化による冷却系の簡素化により、重量をP2H比で31%削減しました。
作業負担の低減、輸送コストの削減にも貢献します。表1に従来製品との仕様比較を示します。

※2 DAB(Dual Active Bridge)回路とは
絶縁トランスを挟んで入力側と出力側に2つのフルブリッジのインバータ回路を配置した絶縁型双方向DC/DCコンバータ。
※3 最新の系統連系技術要件とは
発電設備や需要設備を電力会社の電力系統に接続する際に、電力の安定供給や電力品質を確保するために守るべき技術的な基準。
※4 JET認証とは
日本の第三者機関である一般財団法人 電気安全環境研究所(JET)が実施する、太陽電池発電システムや蓄電池システムの系統連系保護装置等の安全性と性能を認証する制度。
※5 EMI対策とは
電子機器が発する不要な電磁波(ノイズ)が他の機器や通信に悪影響を与えないようにするための規制。太陽光発電システムにおいては、防災行政無線等へ影響を与えるおそれがあることから、総務省より各自治体等へ、CISPR11(第6.2版)に適合した装置を選定するよう、通達が出されている。
2章で紹介した製品の特長を同時に実現するための核であり、業界最高を実現した3つの高効率化技術について紹介します。
絶縁型パワーコンディショナ量産製品として世界初※6のフルSiC※7構成です。ゲート駆動技術やEMI抑制技術で高速デバイスの課題を解決し、実現しました。同じ絶縁型でSi※8パワーデバイス採用のP2Hと比較してパワーデバイスの損失を53%低減(定格運転時)しました。
P2Hでは、特許取得済みの独自のスイッチング方法でDABを制御していましたが、P3HではSiCパワーデバイスの特性に合わせたスイッチング方法に変更/最適化しました。これにより同じ電流の平均値でも実効値を低減でき、実効値の2乗に比例して発生する導通損失を高周波トランスとパワーデバイスにおいて低減しました。
SiCパワーデバイスはパワーモジュールではなく、ディスクリートタイプパッケージを採用し、SiCパワーデバイス並列駆動でパワーモジュール同等の特性としています。SiCパワーデバイス並列駆動には、パワーモジュールと比較すると、配線経路インダクタンスの増加によるスイッチングサージの増加や電流ばらつきによる熱集中など技術課題があります。これらの課題に対し、配線経路が最短になりつつ高精度な温度測定が可能な新規の実装/固定方法を開発しました(2026年6月現在特許出願中)。加えて転流経路のインダクタンスを最適化することにより電流ばらつきの問題も克服しました。
図3に技術要素の相関関係を示します。
一例をあげると、
・パワーデバイス並列駆動技術の適用でパワーモジュールより低コスト化ができる
→比較的高価なSiCパワーデバイスを選択可能
→高価なSiCパワーデバイスは低損失化が可能
のようにつながっており、直接矢印で結ばれていない要素も相互的・循環的に影響し合っていることが分かります。P3Hの圧倒的高効率は、これら①~③の要素を統合し、それぞれの効果を最大限に引き出すことで実現しました。

図4 従来製品との変換効率比較
結果、図4に示すとおり、P3Hは従来製品P2H比で定格時の変換効率を約3%向上しました。これは損失に換算すると約600Wから300Wへ半減しています。
※6 当社調べ 2025年10月時点
※7 SiCとは
炭化ケイ素(Silicon Carbide)のこと。次世代パワーデバイスの一種。
※8 Siとは
ケイ素(Silicon)のこと。パワーデバイスの中で最も広く使われている材料。
P3Hの高効率特性により、導入時の経済効果として、売電収益の増加、または自家消費による買電量の削減が期待できます。
以下の条件において、従来製品(P2H)と比較し、1台当たり約73,000円の増収が見込まれます。
<条件>
・自家消費システム(逆潮流防止による抑制率:10%)
・買電価格:25円/kWh
・パワコン容量(=定格出力):9.9kW
・太陽光発電モジュール1kW当たりの一日の発電量:3.0kWh
・過積載率:100%
・P3Hの平均効率:97%
・比較製品の平均効率(P2H相当):94%
・期間:10年(P3Hの有償保証期間)
当社では、2014年に発表した世界で初めてGaNパワーデバイスを使用したパワーコンディショナ「Enewell-SOL V1」をはじめ、機器の低損失化につながるSiCやGaNといったワイドバンドギャップパワーデバイスの製品への適用を推進してきました。
P3Hは当社初のフルSiC量産製品です。しかし、ワイドバンドギャップパワーデバイスの適用は製品コンセプトとして決まっていたものではなく、お客さまの“コト”実現につながる高効率化・小型化といったご要求に応えるための手段として採用しました。その結果、性能と価値が評価され、市場からのご好評を頂いております。
次世代パワーデバイスと称されるワイドバンドギャップパワーデバイスが、産業機器の分野においても”現世代”となりつつあることを象徴する製品となっています。
今後も技術を深化させながら機種・容量の展開を拡充し、太陽光発電の更なる普及を通じて、日本のエネルギー自給率向上とエネルギー安全保障、そして持続可能な世界の実現に貢献してまいります。