インバータとは

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「インバータ」はエアコンや冷蔵庫、蛍光灯などの照明器具から、エレベータや新幹線にも入っていて、簡単にいうと「モータの回転数を制御する装置」です。必要以上にモータを回転させないように制御できるので、省エネとCO₂削減に貢献しています。ここではインバータを「歴史」、「種類と特徴」、「産業界での活躍」、「環境エネルギー分野への応用」に分けてご説明します。

 

可変速モータドライブとインバータの誕生

最近の可変速モータドライブは、誘導モータや同期モータなどの交流モータの速度制御技術が中心となっています。でも実は古くから、直流モータが速度制御のしやすさから可変速ドライブの代表として広く使われていました。ただ、直流モータには整流子やブラシの磨耗部があるため、定期点検とブラシの交換が必要で、粉じんが多い場所など悪環境での適用ができないなどの課題がありました。そのため、直流モータと同じように交流モータの速度制御が簡単にできる技術の開発が求められていました。

 

1958年にアメリカのGE社が制御能力を有する半導体素子サイリスタを開発し、インバータによる誘導モータの可変速ドライブの道を新たに開きました。インバータ(Inverter)とは「逆変換するもの」という意味です。インバータ装置は交流(三相または単相)をいったん直流に変換し、この直流を再び「周波数を自在に変えられる三相交流」に変換することで、交流モータの回転数、つまり速度を制御できる仕組みになっています。直流を交流に変換するには、このスイッチングができる半導体素子サイリスタを使用するのです。

 

サイリスタの限界

安川電機のインバータ開発は1960年代にまでさかのぼります。当時は、インバータには応答の遅いサイリスタが使用されていました。制御技術も誘導モータのV/f制御(誘導モータに加える電圧と周波数の比を一定にする制御)が主体で、速度制御範囲も1:10程度以下で、応答もあまり速くなく、単純可変速用など比較的負荷変動の少ない用途に適用されていました。高速でダイナミックな制御が必要とされる用途には制御性の良い直流モータが使用されていました。様々な用途にインバータを普及させる取り組みのなかで、サイリスタには限界がありました。

 

世界初のトランジスタインバータ

VS-616T

VS-616T

このような背景の中、当社は半導体メーカーと協業で、高速スイッチングが可能なパワートランジスタを適用したインバータの開発に取り組みました。数年間の試行錯誤と幾多の困難を乗り越えて、工作機械用高速モータドライブの開発に成功し、1974年に世界初のPWM制御形トランジスタインバータ(VS-616T )の製品化に至りました。以来、多様なトランジスタインバータを製品化し、インバータの技術開発をリードしはじめました。

 

ただ、当時の制御方式はV/f方式が採用され、速度制御範囲と速度制御精度の面では理想的とは言えませんでした。構造が頑丈な誘導モータに直流モータと同じような制御特性を持たせるため、ベクトル制御の開発に踏み切りました。

 

ベクトル制御の誕生

1970年代はじめに、ドイツのシーメンス社が磁界オリエンテーション制御を発表し、誘導モータが直流モータと同じように制御できることを理論付けました。当社の若いエンジニアは磁界オリエンテーション制御を技術雑誌の紹介記事で知り震撼しました。すぐに論文を取り寄せ、理論を実現する一歩を踏み出しました。当時は高速・大電力のパワートランジスタが実用化されはじめていて、先行開発していたPWMによる瞬時電流制御の適用によって理論の実現が可能になりました。

 

しかし、ベクトル制御演算に必要なベクトルアナライザやベクトル回転器などを構成する高性能の乗除算デバイスはなく、何千という個別部品を使用してようやく回路を設計しました。こうした苦労の結果、理論通りの性能が発揮されることが確認でき、さらに磁束センサを必要としないより実用的なすべり周波数制御形ベクトル制御を独自に発明したことで、オーム技術賞を受賞しました。この発明によって、誘導モータが直流モータのように指令通り俊敏に動くというベクトル制御が当社で誕生しました。

 

ベクトル制御の適用

ベクトル制御ドライブの最初の適用は1978年に製鉄所の連続鋳造設備で行われました。有害ガスや粉じんが多く、周囲温度も100℃と高温で、直流モータが使える環境ではありませんでした。1:40という広い速度制御範囲が必要な環境で、誘導モータのV/f制御では実現不可能でした。それがベクトル制御によって可能となり、速度検出器を備え、誘導モータの特長とベクトル制御の性能が発揮された第1号機「Varispeed-626TV」が誕生しました。このベクトル制御ドライブはさらに適用が広がり、世界で初めての全AC化が可能でメンテナンス不要の連続鋳造設備を実現し、今もなおその現場では100台近いロールを駆動しています。それ以降、耐環境性などもあって、現在は速度検出器を必要としないセンサレス制御が普及しています。

 

ニーズとともに成長

インバータによる誘導モータドライブは、当初は単純可変速制御でしたが、ベクトル制御の適用によって高性能ドライブが実用化されると、トルク制御が可能で直流モータドライブに置き換わるまでに至り、さらにはデジタル回路やパワートランジスタ、電力変換技術の進歩によって小形化・高性能化・多機能化・高信頼性化を実現しています。最近では永久磁石内蔵の同期モータドライブも製品化され、パワーエレクトロニクス機器を代表するインバータは、様々な制御技術を融合し、多くのニーズに対応して発展し続けています。

 

 

 

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