テクニカルレポート 2023 No.3
高密度化する半導体ウエハ・基板搬送への挑戦
~SEMICON Japan 2022の振返り~

2023年4月17日

はじめに

当社は、SEMICON Japan 2022にて、半導体搬送用ロボットを出展しました。半導体市場では、トランジスタ集積度を上げて高性能化・高機能化を実現するため、前工程の製造プロセスでは微細化が一層進み、現在ではナノオーダーの半導体が製造されています。近年では、後工程のパッケージング技術の進化により、更なる高性能化・高機能化が可能となっています。
当社は今回の出展において、微細化が進む半導体を作る前工程をターゲットに現在拡販中の半導体ウエハ搬送用クリーンロボット「SEMISTAR-GEKKO MD124D」と、パッケージング技術が進化している後工程の半導体パッケージ工程をターゲットに現在開発中の基板搬送用クリーンロボット「SEMISTAR-MU113D」、そして、ワイヤボンダなどの駆動用で使われるACサーボドライブ「Σ-X」を活用した“データにより製造装置の高機能化を実現”するデモシステムの展示を実施しました。それぞれのロボットの特長について紹介します。

半導体を作る工程と当社へのニーズについて

半導体を作る工程は、一般的に図1に示すようなウエハ製造工程とウエハにトランジスタ層を形成する前工程とウエハをチップに切り分け、パッケージングをする後工程を経て半導体のチップが作られます。

半導体を作る工程と当社へのニーズ
図1 半導体を作る工程と当社へのニーズ

アドバンスドパッケージング工程
図2 アドバンスドパッケージング工程

こうした工程の中で、特に前工程では、究極のクリーンな環境下で、高精度かつウエハへのダメージのない搬送をしたい、装置が止まらないようにしたいなどの要望があります。
また最近では、最新のパッケージング技術(アドバンスドパッケージ技術)が着目されており、半導体の高集積化、機能向上を実現するアドバンスドパッケージング工程(図2)が今回のSEMICON Japan2022でも注目されました。この工程では、基板の大型化の要望があり、その基板をクリーンに高精度に搬送するロボットが求められています。

各展示デモの紹介

①半導体ウエハ搬送用クリーンロボット「SEMISTAR-GEKKO MD124D」

SEMISTAR-GEKKO MD124D
図3 SEMISTAR-GEKKO MD124D

前工程において、究極のクリーンと高精度・低振動を実現するために、ロボット駆動部から減速機とベルトを無くしたダイレクトドライブモータ駆動の半導体ウエハ搬送用クリーンロボットSEMISTAR-GEKKO MD124Dを2019年に開発・市場投入しました。(図3)
今回、市場での実績と当該ロボットの量産供給が可能になったことを踏まえ、SEMICON Japan 2022にて、より幅広いお客さまへ紹介しました。
減速機・ベルトを廃止し、モータがアームを直接駆動※1することで、ごみを出さず、アームからエンドエフェクタへの振動を大幅に低減し、かつダイレクトドライブの特長である高精度を実現しました。

(詳細は テクニカルレポート2021 No.1  振動レスで精密な動きを実現~半導体ウエハ搬送ロボット 参照)

従来機種との精度比較
図4 従来機種との精度比較

これにより、高スループットのパッシブグリップハンドによるウエハ搬送・狭小スロットピッチへのウエハ搬送・高精度ウエハ搬送による歩留まり向上を実現しています。参考までに従来機種との精度比較を図4に示します。
SEMICON Japan 2022では、SEMISTAR-GEKKO MD124Dのひとつの特長である低振動を今まで困難であった7mmの狭小スロットへの搬送と2枚同時ウエハ搬送を実演しました。

半導体はナノからオングストロームへの時代に変わっていきます。
この市場に貢献できるソリューションのひとつがダイレクトドライブのロボットです。当社は、製品を半導体技術ロードマップから落とし込み、お客さまと一緒に課題解決ができるソリューションを提案・実現することで、お客さまの要望に応えていきます。

②パッケージ基板搬送用クリーンロボット「SEMISTAR-MU113D」

SEMISTAR-MU113D
図5 SEMISTAR-MU113D

アドバンスドパッケージング工程の中で、高密度に実装するための基板の大型化が歩留まり向上のためのキーワードとなっています。当社では、この要望に応える搬送ロボットを開発しました。(図5)
SEMISTAR-MU113Dは半導体ウエハ搬送用ロボットが持つ小フットプリントと高精度・高速搬送といった特長をそのままに、最大可搬質量13㎏を実現し、パッケージ用の高密度実装基板の搬送を容易にしました。
また、当社のウエハ搬送技術に加え、実績のある液晶搬送技術を応用し、厚さの異なる基板(厚さ=約0.2~3.0mm)を1台のロボットだけを用いて、部品交換や切替操作不要な搬送技術を開発しました。

SEMICON Japan 2022では、510mm角の基板搬送を実演しました。なお、当ロボットは2023年中の製品化を目指して市場評価などを進めています。
ムーアの法則で進んできた半導体の新たな高機能化の方向性として、パッケージングがクローズアップされています。パッケージング技術の進化に、“回す・止める”のモータ技術を機構部品やロボットとして提供し、お客さまと一緒になくてはならない半導体の進化をオール安川の技術でサポートしていきます。

③ACサーボドライブΣ-Xを活用したデータの可視化により製造装置の高機能化を実現

可視化による予防保全の例
図6 可視化による予防保全の例

後工程の中で、ワイヤボンダなどはACサーボモータで駆動されています。当社ACサーボドライブΣ-Xを適用することで、サーボモータがセンサーとなって、メカ振動や負荷状態等、各種データの収集・可視化・分析が可能となります。たとえば、装置の駆動部の機構の摩耗、劣化等の微細な変化を、サーボが検出し、今まで気付けなかった装置変化をデジタルで可視化します。図6に予防保全に活用した例を示します。
SEMICON Japan 2022では、歯車機構・ボールねじ機構・カム機構の3つの機構を実演しました。

※1 減速機・ベルトを廃止し、モータがアームを直接駆動
ハンド部は除く

おわりに

今回は、当社がSEMICON Japan 2022にて出展した、前工程をターゲットにした半導体ウエハ搬送用クリーンロボット「SEMISTAR-GEKKO MD124D」、後工程の半導体パッケージ工程をターゲットにしたパッケージ基板搬送用クリーンロボット「SEMISTAR-MU113D」、ACサーボドライブΣ-Xを活用したデータの可視化により製造装置の高機能化を実現するシステム例を紹介しました。
当社の搬送ロボットは進化している前工程と後工程に対応し、高精度・高速搬送で歩留まり向上に貢献します。また、当社のACサーボドライブΣ-Xで装置変化を可視化することで予防保全などに活用でき、生産性の向上が実現できます。
半導体市場は、通信の5G化、自動車のEV化、あらゆる製品のIoT化、データセンターの巨大化などにより、今後も拡大していくことが想定されています。この半導体市場の成長を受けて、半導体ロボット市場も今後も変化・発展していくものと想定しています。
当社は、半導体市場で求められる要望・お客さまのお困りごとに対し、製品力、技術力を最大限活用し、ソリューションを提供していきます。

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