Vol.81 No.2 サーボドライブ特集

サーボドライブ特集によせて

熊谷 彰

執行役員
モーションコントロール事業部長
熊谷 彰
Akira Kumagae

 AC サーボドライブは,ロボット,工作機械,半導体製造装置,電子部品実装装置,プレス機,繊維機械など多くの生産分野で採用を頂いており,顧客装置の生産性や製造品質を左右する非常に重要な製品となっている。特に,近年はスマートフォンや自動車などに加え,IoT (Internet of Things)をキーワードにしたデータセンタ投資などが活況であり,工作機械,半導体,電子部品関連を中心に需要の拡大が続いている。更に,ドイツの“インダストリ4.0”,アメリカの“インダストリアルインターネット”などに代表されるスマートファクトリー実現に向けた世界的な潮流の中,自動化技術のキーとなるAC サーボドライブの需要は今後ますます増大していくと予想される。
 このような製造業の大きな変化の中,AC サーボドライブに対する要求も大きく変わりつつある。これまでの高速で決められた位置に正確に停止するというサーボドライブ本来の性能は当然の要求品質として,更に,小型化や様々な装置の用途に対応できる品ぞろえの拡充などが必要となっている。特に,スマートファクトリーへの要求の中でAC サーボドライブにも汎用LAN ベースの高速ネットワークの搭載や情報透過性の強化など新たな要求が強まっている。
 当社は,1962年にDC サーボドライブを,1983年にAC サーボドライブの発売を開始した。1992年にはオールディジタルAC サーボドライブΣシリーズを製品化し,大幅な小型化,高性能化,そしてディジタル化による使いやすさの更なる向上を実現し,工作機械など限られた用途が中心であったAC サーボドライブの活躍の場を飛躍的に拡大させた。以降,小型化,高性能化,市場ニーズに従ったラインアップの拡充を進めながら,Σ-II,Σ-III,Σ-V,Σ-7と世代を重ね,2017年4月にはAC サーボモータ累積出荷台数1,500万台を達成した。
 現在の主力製品であるΣ-7シリーズでは「7つの極める」をコンセプトに“装置性能”,“使いやすさ”,“環境性能”,“安心”,“サポート”,“ラインアップ”,“互換性”の7つのキーワードを元に顧客に最適な製品を展開し,2013年のリリース以来好評を頂いている。Σ-7シリーズは現在も進化を続けており,データ保存用のバッテリーが要らない「バッテリーレス絶対値エンコーダ」や,サーボアンプとサーボモータを一体にして制御盤設計を容易にする「アンプ内蔵サーボモータ」などを「Σ-7ファミリー」として製品化した。特に,アンプ内蔵サーボモータでは世界で初めてガリウムナイトライド(GaN)パワー半導体を採用し,シリコン(Si)パワー半導体では達成できなかった高速スイッチングを実現することで大幅な小型化を実現した。AC サーボドライブの新たな可能性を示す製品として,今後大いに期待できると考えている。
 本特集では,当社のAC サーボドライブへの取組みについて概要を説明し,実際の適用事例などを交え最新の技術・製品動向を説明する。本特集が需要家の皆様に発想の端緒を提供するとともに,当社の製品や技術に関心を持って頂ければ幸いである。

モーションコントロール市場の動向と当社の取組み

 モーションコントロール市場は,世界経済の前進や後退の波に揺られながらも持続的な回復が期待されている。市場規模の面では中国・アジアなどの新興国へのシフトが続く一方で,技術面ではインダストリ4.0などに代表される新しいトレンドが押し寄せている。
 当社は,そのような市場動向の変化にいち早く対応して,最先端のモーションコントロール製品を提供してきた。最近も,AC サーボドライブΣ-7シリーズ,マシンコントローラMP3000シリーズの機種展開や機能の充実に取組み,更にモーションネットワークの強化やクラウドサービスの導入に取組んでいる。
 本稿は本特集の総論として,最近の市場動向と当社の取組みを概観している。

Σ-7ファミリー

 

中空サーボモータSGM7T

SGM7T モデル

 当社の従来のAC サーボモータΣ-Ⅲ及びΣ-Vシリーズでは,設備のコンパクト化などを目的にシャフトを中空化したモータへのニーズに対して,カスタム専用の中空サーボモータを提供してきた。生産設備の高速・高精度化と並んでコンパクト化へのニーズは強い。このコンパクト化を実現するうえで中空サーボモータへの期待は大きいものがある。今回,中空サーボモータをΣ-7シリーズの標準製品としてラインアップし,この市場ニーズに的確に応えられるようにした。
 本稿では,中空サーボモータSGM7T モデルの開発の背景,特長及び仕様について述べている。

LinearΣ F 形リニアサーボモータSGLFW2

短辺ターンオーバの適用

 半導体製造装置の位置決めや検査装置の送り機構などにおいて,高精度な位置決めや短時間での位置決め整定性を実現するため適用されるコア付きフラット形リニアサーボモータに対し,更なる最大推力の向上,小型化が求められている。
 これらのニーズに応えるため,当社では,従来機種に比べて最大推力の向上や小型化,高精度化,省エネ・安全性向上を実現させたF 形リニアサーボモータSGLFW2をラインアップした。
 本稿ではF 形リニアサーボモータSGLFW2の開発の背景,取組み及び特長について述べている。

Σ-7ダイレクトドライブサーボモータ SGM7D,SGM7E,SGM7F

SGM7D モデル

SGM7E モデル

SGM7F モデル

 当社は2001年からダイレクトドライブサーボモータを市場に提供してきている。近年の小型(扁平,小径),高精度,高タクト(高速,低慣性)への要求に対応するため,最新のΣ-7シリーズとして,高分解能24ビット反射型エンコーダを搭載したSGM7D モデル,SGM7E モデル,SGM7F モデルを製品化した。SGM7D モデルは高トルク,高剛性に重点を置いた製品,SGM7E モデルは速度ムラの少ない,滑らかな動きに重点を置いた製品,SGM7Fモデルは小型,高タクト化に重点を置いた製品である。
 本稿では,これらの各モデルと高分解能24ビット反射型エンコーダの特長について述べている。

Σ-7バッテリーレス絶対値エンコーダ

 サーボモータの位置検出に欠かせないエンコーダには,インクリメンタル方式とアブソリュート(絶対値)方式がある。アブソリュート方式は機能面では優れているが,位置情報(多回転量)を保持するためのバッテリーを必要とすることから,管理が煩雑であるという課題があった。当社では,Σ-7シリーズ開発の一環としてアブソリュート方式エンコーダのバッテリーレス化を図ることにより,配線の簡素化やメンテナンスフリー化を実現した。
 本稿では,Σ-7バッテリーレス絶対値エンコーダの原理,特長及び仕様について述べている。

当社のバッテリーレス化の仕組み

Σ-7シリーズ用途最適型サーボドライバ

 モーションコントロールの適用分野の多様化に伴い,近年では半導体や電子部品などの市場において,市場に特化した高精度化,高速化,協調動作制御など種々のニーズが顕著になり,その対応が急務となっていた。
 当社はこのような市場ニーズの多様化と高度化に応えるため,顧客用途に最適な機能を搭載したΣ-7シリーズFT 仕様のサーボドライバを開発し,ラインアップを充実させてきた。これにより,様々な市場の顧客にとって最適なソリューションを提供することが可能となった。
 本稿では,これらの用途最適型サーボドライバの概要,特長及び用途について述べている。

Σ-7シリーズFT 仕様製品の位置付け

超大容量サーボモータ

超大容量サーボモータ(450kW)

 近年,地球環境保護や作業環境改善などの必要性から,省エネ・クリーン化や汚染物質の低減などが重視されている。このため,自動車の生産機械に代表されるプレス機や射出成形機などの大型機械の分野においても,クリーンで,高性能化にも対応できる動力源として,従来の油圧駆動からモータ駆動への置換えニーズが高まっている。
 当社は,省エネで高性能なサーボモータのラインアップを展開するとともに,大型機械向け大容量サーボモータ市場の拡大に対応するため,超大容量サーボモータの開発を推進してきた。
 本稿では,超大容量サーボモータの課題,開発の概要及び製品の概要について述べている。

超大容量サーボシステム

 プレス機や射出成形機などの大型機械は,省エネ・クリーン化のニーズにより,油圧から電動化,特に大容量のサーボモータ化が進んでいる。これら大容量サーボモータの市場では,複数のサーボドライバを使用して1台のモータを制御する複巻サーボシステムが主流であるが,従来のシステムではモータからの回生エネルギーの有効活用や複雑なモーション指令ができないなどの課題があった。
 当社ではこれらの課題を解決するため,複巻制御ユニット,複巻制御用サーボドライバ,DC/DC コンバータを製品化し,従来に比べ,より省エネで複雑な制御を可能とする超大容量サーボシステムを実現した。
 本稿では,超大容量サーボシステム及びこれら製品の概要について述べている。

複数軸の完全同期

コントローラ内蔵2軸一体サーボドライバΣ-7C

 産業用機器の製造分野では,生産性やライン変更の柔軟性の向上,自動化の徹底,多品種少量生産への対応などの観点から,装置コンポーネントの小型化,省配線化,分散システム化などへの要求が高まっている。
 当社は,AC サーボドライブΣ-7シリーズの市場別モデルとして,ターゲット市場のカストマニーズにきめ細かく応えることのできる高付加価値の製品開発に取組んできた。コントローラ内蔵2軸一体サーボドライバΣ-7C は,市場別モデルの一翼として,コンパクトな装置構成と豊富な拡張性を同時に実現した製品である。
 本稿では,Σ-7C の開発の背景,製品の概要,特長及び適用事例について述べている。

Σ-7C の製品コンセプト

アンプ内蔵サーボモータΣ-7F

 生産設備の更なる小型化や動作の高速化・高精度化のニーズに応えるため,世界で初めてガリウムナイトライド(GaN)パワー半導体を搭載し,アンプ部を内蔵したΣ-7シリーズサーボモータを開発した。アンプ内蔵サーボモータを適用すれば,制御盤内の複数台のサーボドライバを1台のコンバータに置換えられるため,制御盤を小型化でき,システムへのサーボ軸の増設などにおけるフレキシビリティを向上させることができる。GaN パワー半導体を採用したアンプ部は,小型・高効率化だけでなく,省エネ,静音化も実現して,市場ニーズに的確に応えることができる。
 本稿では,アンプ内蔵サーボモータの開発の概要,特長及び仕様について述べている。

従来システム
Σ-7F

従来システムとΣ-7F

エンジニアリングツールSigmaWin+ Ver.7

 サーボドライブの高性能・多機能化が急速に進むとともに,そのセットアップ及び調整を担うエンジニアリングツールの重要性は一層高まっている。当社は,最新のAC サーボドライブΣ-7シリーズに最適化されたエンジニアリングツールSigmaWin+ Ver.7を開発した。SigmaWin+ Ver.7は,サーボドライブのセットアップからチューニング,保守までをサポートしており,従来のSigmaWin+では市場のニーズと課題に十分に応えられなかった機種拡充の容易さ,グローバル化,システム指向,デザイン・使いやすさを実現している。
 本稿では,SigmaWin+ Ver.7開発に当たっての市場のニーズと課題,及び特長を述べている。

SigmaWin+ Ver.7システム構成

クラウドサービスMechatroCloud

 ドイツで提唱されたインダストリ4.0を始めとして,日本を含め世界的にIoT(Internet of Things)の新しい潮流が加速している。以前から当社が取組む自動化の方向を発展させ,新しい潮流にあった生産システムを安川版インダストリ4.0として提案していくことが重要である。その具体化として,安川電機クラウド基盤と連携するモーションコントロール分野のクラウドサービスMechatroCloudと,これを通じて提供されるBTO(Build to Order)サービス及びスマートフォン用アプリケーションSigmaTouch!を開発した。
 本稿では,これらの開発の背景,当社の取組み及び各サービスの特長について述べている。

MechatroCloud を通じて提供するサービス

モーションコントロール製品の適用事例

Σ-7CとΣ-7Sの適用

 当社は,一般産業用機械の分野におけるタクトタイム短縮,高精度,フレキシブルなシステム構成などの高度な市場要求に対して,モーションコントロール製品(マシンコントローラMP3000シリーズ,AC サーボドライブΣ-7シリーズなど)のラインアップにより応えてきた。更に,コントローラ内蔵2軸一体サーボドライバΣ-7Cやアプリケーションに最適なΣ-7シリーズFT 仕様などの展開によりΣ-7ファミリーの充実に努め,プリント基板検査装置や自動ラベリング装置を始めとする高度な制御が要求される分野でも適用を進め,顧客のニーズに応えている。
 本稿では,モーションコントロール製品の適用事例について述べている。

[製品紹介]AC サーボドライブΣ-7 mini シリーズ

Σ-7mini

 当社は「機械の駆動部をもっと小さく,もっと速く,もっと正確に」を目指し,1997年8月に□25mm シリーズ10~30W の超小容量のAC サーボドライブΣ-mini シリーズを製品化した。2000年12月に,更に小型な□15mm シリーズ3~10W の機種,2011年8月にはΣ-miniシリーズの後継としてΣ-V mini シリーズを製品化し,半導体・電子部品製造装置,巻線機,繊維機械,クリーンロボット,AGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)などの用途に提供している。近年,装置のタクトタイム向上の要求により,更なる高出力化,高精度化が求められている。
 今回,Σ-V mini シリーズの後継としてΣ-7mini シリーズを製品化した。Σ-7mini シリーズは,多くのユーザから好評を得ている高性能・高機能のAC サーボドライブΣ-7シリーズの新機種である。本機種の追加により,超小容量サーボドライブの更なる高性能化を実現する。

[製品紹介]最高回転速度25,000min-1高速主軸モータ

高速主軸モータ(UAKAJ-05D)

 アジアでのスマートフォン部品加工では多様化が求められている。この要求に応えるため,部品の製法はアルミ板から固有の形状に削りだしていく方法が取られている。このため,部品加工メーカは部品加工用工作機械として,小型の#30テーパマシニングセンタを選択し,それを多数そろえ,アルミ部品を大量に切削して生産している。このような用途では,アルミの加工高効率化のため,小型,高速の主軸モータが必要となる。また,更なる高品位の面加工を達成するため,主軸モータには高速かつ低振動,高回転精度,低発熱であることが求められる。
 当社は,これらの要求に応えるため,工作機械メーカにモータとドライバを供給することで協業し,#30テーパマシニングセンタ用として最高回転速度25,000min-1の高速主軸モータを製品化した。

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