Vol.81 No.1 2016年の技術の成果

巻頭言

小笠原 浩

代表取締役社長
小笠原 浩
Hiroshi Ogasawara

 2016年における当社を取巻く経済状況は,世界的には英国のEU離脱表明など全般的な不安定傾向は続いていますが,欧米では2015年に引続き内需を中心とした緩やかな回復基調を持続しました。中国では前半減速したものの総じて底堅く推移しました。国内については前半の急激な円高による落ち込みはありましたが,後半の円安への転換などで緩やかな回復傾向となりました。

 このような状況下,当社は創立100周年を迎えた2015年に次の100年に向けた長期経営計画「2025年ビジョン」を掲げました。「2025年ビジョン」では「コア技術の進化とオープンイノベーションの融合により,社会に対し新たな価値を提供する」をモットーに,「世界最先端の技術+オープンイノベーションで新たな産業自動化革命を目指す,メカトロニクス事業」,「安全で安心して暮らせる持続可能な社会を目指す,クリーンパワー事業」,「医療・福祉分野へのメカトロニクス技術の応用で人間の能力がより生かされる社会を目指す,ヒューマトロニクス事業」を当社が目指す事業領域としています。2016年度は,それに基づいた中期経営計画「Dash25」をスタートさせました。具体的には,メカトロニクスを軸とした既存事業の拡大,ロボットや環境エネルギー機器を中心とした新たな事業の確立・拡大を目指します。インダストリ4.0,IoT(Internet of Things),AI などの新しい技術が技術革新を興す時代を好機と捉え,当社の技術立社としての特長を最大限に発揮するとともに,オープンイノベーションを柔軟に進め,事業を発展させていきます。

 2016年における個別の事業分野の技術開発については以下のとおりです。

 モーションコントロール事業では,主力製品であるACサーボドライブΣ-7シリーズ,マシンコントローラMP3000シリーズのラインアップを拡充し用途を拡大するとともに,従来絶対値エンコーダで必要であったバックアップ用バッテリを不要としたバッテリレスエンコーダ搭載のΣ-7シリーズなどを製品化しました。また,次世代インバータゼロシリーズ第一弾の産業用汎用インバータGA700に引続き,クレーン専用インバータCR700を開発しました。更に,「平成27年度省エネ大賞」を受賞したマトリクスコンバータU1000をベースにしたエレベータ専用マトリクスコンバータU1000LなどU1000のラインアップも充実させています。

 ロボット事業では,産業用途において高性能・高機能かつクラス世界最小サイズで「Easy to Use」を実現したロボットコントローラYRC1000を開発するとともに,それに対応したアーク溶接ロボットMOTOMAN-AR シリーズ,多用途適用型ロボットMOTOMAN-GP シリーズを市場投入し,更なる高速・高精度,適用用途の拡大を進め,生産性向上などに貢献しました。バイオメディカル用途では,高度な衛生管理の要望に応えた無菌環境対応ロボットMOTOMAN-MH5BMを製品化しました。

 システムエンジニアリング事業では,社会システム分野において浄水場でのビッグデータを活用した薬品注入システムを開発し,検証を進めています。環境エネルギー分野では,子会社であるThe Switch 社の風力発電技術を活用して大型風力発電機器の製品開発に取組んでいます。

 研究開発の分野では,安川版インダストリ4.0の実現に向けて次世代生産システム装置の技術開発に取組んでいます。具体的にはロボットの把持プランニング技術,ICT活用による生産性向上を実現する解析モジュールの開発を進めています。また,ヒューマトロニクス事業に向けた上肢リハビリ装置,足首アシスト装置,移乗アシスト装置,及び医療・福祉機器に最適化したコンポーネントとして小型関節駆動ユニットなどの開発を進めています。

 当社は,今後も社会に新たな価値を提供することを目指して,コア技術(サーボ,インバータ,ロボット)を更に発展進化させるとともに,IoT,AIを始めとしたネットワーク技術を駆使した安川版インダストリ4.0の実現,環境エネルギーなどのクリーンパワー事業のグローバル展開,及びヒューマトロニクス機器の開発などに取組んでいきます。今後とも新たな事業領域に挑戦し続ける当社のソリューションにご期待ください。

[モーションコントロール事業]AC サーボモータΣ-7シリーズにバッテリレス仕様をラインアップ

Σ-7シリーズバッテリレスサーボモータ

 ACサーボモータΣ-7シリーズに,バッテリレス絶対値エンコーダ搭載の回転形モータをラインアップした。バッテリが不要となることで,配線の簡素化,メンテナンス性の向上を実現した。

[モーションコントロール事業]マシンコントローラMP3000シリーズにPCボードタイプをラインアップ

 マシンコントローラMP3000シリーズに,PC ボードタイプマシンコントローラMP3100をラインアップした。従来製品であるMP2100と互換性を保ちながら,性能,使いやすさを向上させ,モーションAPIによるPC との強力連携を実現した。

[モーションコントロール事業]ACサーボドライバΣ-7シリーズにFT62仕様をラインアップ

Σ-7シリーズ FT62仕様サーボドライバ

 ACサーボドライバΣ-7シリーズに,定点出力機能と回転座標機能を搭載したFT62仕様を製品化した。

 一定速時ばらつき5μs 以下で定点出力でき,サーボ機構の通過位置に連動して出力処理を必要とする装置に最適である。

[モーションコントロール事業]「平成27年度省エネ大賞」経済産業大臣賞を受賞

安川マトリクスコンバータU1000

「平成27年度省エネ大賞」経済産業大臣賞

 世界で初めてマトリクスコンバータ技術を応用した「安川マトリクスコンバータU1000」が一般財団法人省エネルギーセンター主催の「平成27年度省エネ大賞」において,製品・ビジネスモデル部門で経済産業大臣賞を受賞した。

[モーションコントロール事業]太陽光発電用パワーコンディショナが「北九州エコプレミアム産業創造事業」に選定

「北九州エコプレミアム」選定

 当社の太陽光発電用パワーコンディショナEnewell-SOL L1シリーズ,V1シリーズの2機種が,北九州市が市内の環境に配慮した産業・技術分野の製品・サービスに対して環境配慮活動の推進事例として毎年PRする「北九州エコプレミアム」に選定された。

[モーションコントロール事業]クラウドを活用したYASKAWA Drive Cloud をスタート

YASKAWA Drive Cloud

 MechatroCloud,MOTOMAN-Cloudに続いて,インバータを対象としたクラウドサービスYASKAWA Drive Cloudを開始した。初めてインバータを使うユーザにも安心して使用できる新たな使いやすさを提供する。

[モーションコントロール事業]主な広報・展示会

エコテクノ2016 当社ブース

  • (1) HVAC&R JAPAN 2016(2016年2月23~26日,東京ビッグサイト)では,産業用汎用インバータGA700,マトリクスコンバータU1000のデモ機を展示した。冷凍機・空調機の省エネに関して多くの来場者の興味をひき,好評を得た。
  • (2) 第7回省エネ・節電EXPO(2016年7月13~15日,東京ビッグサイト)では,GA700,U1000のデモ機を展示した。ビル・工場の省エネに関して多くの来場者の関心を集めた。
  • (3) エコテクノ2016~地球環境ソリューション展~(2016年10月12~14日,西日本総合展示場)では,太陽光発電用三相絶縁型パワーコンディショナEnewell-SOL P2H,U1000,GA700を出展した。当社の環境配慮製品は多様な業界関係者の興味を引き,好評を得た。

[ロボット事業]ソリューション提案力の強化

中部支店・中部ロボットセンタ
(愛知県みよし市)

 少子高齢化に伴う労働力の確保や,生産設備の汎用化を目的として,ロボットを活用した自動化ニーズが高まっている。しかしながら,これまでロボット化が進んでいないプロセスに対するロボットを使った自動化ソリューションの実現は容易ではない。

 当社はこれらのエンドユーザが抱える課題を直接把握し,周辺装置メーカやシステムインテグレータとともにソリューションを構築する活動に取組んでおり,ソリューション構築に向けた検証の場として各地のロボットセンタを運営している。

 日本国内では埼玉県,愛知県,北九州市の3箇所で運営しており,2015年5月にオープンした愛知県みよし市の中部ロボットセンタでは,2016年10月に来場者1万人を達成した。

 また,グローバルな塗装ソリューション提案を強化するため,韓国の塗装ロボットシステムインテグレータへの出資を決定した。

[ロボット事業]開発力・生産力の強化

 現在,北九州市と中国江蘇省常州市でロボットを生産しており,高い水準で拡大を続ける中国ロボット市場に対応するため,中国工場での生産能力を拡大した。

 更に,日本と中国に加えポテンシャルが高い欧州市場の顧客ニーズに応えるため,新たなサプライチェーンを構築し,欧州全域に迅速に製品を供給する拠点としてスロベニア(リブニツァ市)での生産拠点設立を決定した。

安川(中国)機器人有限公司
(中国江蘇省常州市)

[ロボット事業]新製品の投入

アーク溶接ロボット
MOTOMAN-AR1440

アーク溶接電源
MOTOWELD-X350

ロボットコントローラ
YRC1000

バイオメディカル用途向けロボット
MOTOMAN-MH5BM

 今回製品化したロボットコントローラYRC1000に対応したアーク溶接ロボットMOTOMAN-ARシリーズと多用途適用型ロボットMOTOMAN-GPシリーズを製品化した。MOTOMAN-ARシリーズは新型アーク溶接電源MOTOWELD-X350と組合せることで,溶接に最適な条件を自動調整することができる。

 更に,小・中型塗装ロボットMOTOMAN-MPX1150,-MPX2600や,バイオメディカル分野を始めとして高度な衛生管理が求められる分野向けに最適化したロボットMOTOMAN-MH5BMを製品化した。

ロボットコントローラ
YRC1000

バイオメディカル用途向けロボット
MOTOMAN-MH5BM

[ロボット事業]展示会

TOKYO PACK 2016 当社ブース

 食品産業を始めとした自動車産業以外の分野に向けた活動強化として,FOOMA JAPAN 2016(2016年6月7~10日,東京ビッグサイト)やTOKYO PACK 2016(2016年10月4~7日,東京ビッグサイト)といった展示会に参加し,積極的なソリューション提案を行った。

 ロボット単体だけでなく,ビジョン機器などの周辺機器と組合せたロボットシステムとしての具体的なソリューションの展示に,多くの来場者の関心が集まった。

[システムエンジニアリング事業]鉄鋼システム

 鉄鋼業界は,2020年の東京オリンピックに向けて建設工事の増加,老朽化したインフラ設備の更新・メンテナンスの継続などが予想され,底堅い粗鋼生産需要が今後も見込まれる。また,IoT(Internet of Things)適用,省エネや環境対応ニーズへの対応など切磋琢磨(せっさたくま)していく必要がある。

 このような状況の中,当社は国内では安定操業に貢献するシステムの納入や更新における設備休止期間の最短化による生産性維持,生産効率化に対する制御改善などのユーザニーズの実現に貢献した。海外においてもシステムインテグレータとのエンジニアリング協業,連携などグローバルな取組みを行い,国内外の鉄鋼各社のニーズに応えた。

[システムエンジニアリング事業]社会システム

横浜市川向ポンプ場

京都市洲崎排水機場 集中監視センター

青森県六ヶ所村中部浄化センター
中央監視室

カンボジア国バッタンバン市浄水場
中央監視室

 上水道においては2013年3月に策定された「新水道ビション」,下水道においては2014年7月に策定された「新下水道ビジョン2100」に基づき,効率・効果的な施設の統廃合,監視制御システムの高度化や下水道の新たな機能や役割が求められている。

 これら上下水道施設において,当社は横浜市の川向ポンプ場に自家発電設備を,京都市の洲崎排水機場に集中監視システムを納入し,市街地の速やかな雨水排除に貢献した。また,青森県六ヶ所村の中部浄化センターに最新の監視システムを採用して設備の再構築を行った。

 更に,福岡県内の浄水場にAI(人工知能)を応用した機械学習による薬品注入実証システムを構築し,浄水場管理者と支援システムの有用性検証を行っている。

 海外では,カンボジアのコンポンチャム市とバッタンバン市の浄水場に動力設備,監視設備を納入し,安全な水の安定供給に貢献した。

[システムエンジニアリング事業]環境エネルギーシステム

ハイブリッド駆動制御ドライブ盤

 国際海運分野では,2020年から燃料油中の硫黄分規制が現行の3.5%以下から0.5%以下に強化される。そのため燃料油の高騰が懸念され,省エネ方策として軸発電装置や電気推進の導入が高まると予想されている。

 こうした状況の中,当社では小型タグボートを対象にメインエンジンとモータのベストミックスによるハイブリッド駆動制御ドライブ盤を製作し,NK船級規格(ストック認証)を取得した。

 また,軸発電並びに中大型電気推進装置の製品群を拡充するため,フェリーやオイル&ガス向けオフショア支援船で豊富な実績を有するバルチラノルウェー社の船舶用ドライブ部門を取得した。

[研究開発]国際福祉機器展

第43回国際福祉機器展 当社ブース

第43回国際福祉機器展 展示の様子

 第43回国際福祉機器展H.C.R.2016(2016年10月12~14日,東京ビッグサイト)では,当社の新規事業であるヒューマトロニクス事業の医療・福祉分野での取組みを紹介した。本展示会は福祉機器展としてはアジア最大の規模であり,開催中は多くの顧客に来場いただいた。

 展示会には,既に販売開始している下肢用リハビリ装置CoCoroe LR2,脊椎損傷用歩行アシスト装置CoCoroe ReWalk を出展した。また,販売開始予定である促通反復療法を支援する上肢リハビリ装置CoCoroe AR2,介助者の負担軽減を目指す移乗アシスト装置,歩行訓練をアシストする足首アシスト装置なども実機展示した。

 ブース内では各装置のデモンストレーションを行い,実際に装置を使用し体験することで,特長や機能をご理解いただいた。多くの病院及び施設関係者へのCoCoroe ブランドの認知度アップを図るとともに,ニーズのヒアリングにより,利便性の良い製品の実現につながる活動を行うことができた。

[研究開発]ロボット産業マッチングフェア

ロボット産業マッチングフェア 当社ブース

 ロボット産業マッチングフェア北九州2016(2016年6月15~17日,西日本総合展示場)において,ワーク配膳作業をティーチングレスで実現するロボットシステムを出展した。今回の出展では,計測したバラ積みワークの位置姿勢に応じて,ワークの把持・持ち替え・設置までのロボットの動作プログラムをプランニング機能によって都度自動生成しながら作業するデモを行った。プログラミングペンダントによるティーチング作業を不要にする先進機能が多くの来場者の注目を集めた。

[研究開発]電気学会電気学術振興賞(進歩賞)を受賞

電気学会電気学術振興賞(進歩賞)受賞

 SiC(シリコンカーバイド)を搭載し,入出力の電圧電流を正弦波にする究極の電力変換装置(マトリクスコンバータ)を開発し,パワーエレクトロニクス関連分野では初めて電気学会電気学術振興賞(進歩賞)を受賞した。マトリクスコンバータは,世界で初めて製品化した当社のフラグシップドライブであり,今回の開発では更に環境性能を向上できたことが評価された。

[研究開発]電機工業技術功績者表彰

電機工業技術功績者表彰

 一般社団法人日本電機工業会主催の電機工業技術功績者表彰重電部門において,研究開発分野から以下の優良賞,奨励賞を受賞した。

  • (1) 優良賞「サーボ制御で理学療法士の熟練の技を再現する下肢用リハビリ装置LR2
     LR2は当社独自のサーボ制御技術を適用した下肢用リハビリ装置であり,理学療法士が下肢の他動訓練として行っている治療動作を再現し,療法士の負担軽減に貢献したことが評価された。
  • (2) 奨励賞「高性能・超薄型バッテリレスエンコーダ」
     バッテリバックアップが不要な高性能・超薄型の絶対値エンコーダを提供し,サーボ機器の省配線化とともにメンテナンス性を向上したことが評価された。

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