Vol.80 No.3 ロボット・ソリューション特集

ロボット&ソリューション特集によせて

小川 昌寛

執行役員
ロボット事業部長
小川 昌寛
Masahiro Ogawa

 当社は,1977年に日本で初めて全電気式産業用ロボット「MOTOMAN」を発売して以来,国内外の産業用ロボット市場をリードしてきた。産業用ロボットは,3K 作業からの作業者の解放,生産性向上,製品品質の安定,熟練労働者不足への対応に大きく貢献し,生産現場では不可欠な存在となっている。
 産業用ロボットの出荷台数は,2009年の金融危機により一時大きく落ち込んだが2011年から増加へと転じ,世界経済の回復により再び活発になった自動車や電機関連の設備投資に加え,日本やアメリカ,ドイツを抜き世界最大の産業用ロボット市場へと成長した中国がグローバル市場の拡大をけん引することで年間出荷台数の記録を更新し続けている。そして自動車や電機以外の分野における労働力不足に対する解決手段や,ドイツのインダストリ4.0のようなIoT(Internet of Things)に関する取組みの重要な構成要素として産業用ロボットが注目されるなど,更なる市場拡大が期待される。
 当社は,これまでもアーク溶接,スポット溶接,塗装,クリーン用途など各種用途に最適化したロボットを開発しており,可搬質量,速度,環境性能,信頼性などの基本性能とともに使いやすさを向上させた新製品を開発し市場に投入してきた。最新のMOTOMAN-GP/AR シリーズはエンドユーザのグローバル展開に対応した新型コントローラYRC1000との組合せによりその性能を更に高めている。新型ロボットに加えエンドユーザが最終的に求める溶接,塗装,搬送などの自動化ソリューションを提供するため,アーク溶接電源,ビジョンシステム,力センサといった周辺装置も開発し,MOTOMAN との組合せによるソリューションとして提案を行っている。
 市場拡大に伴いユーザも多様化し,従来と異なる用途や機能などソリューションアイデアの変化やニーズの多様化が進んでおり,それらに呼応するロボットの開発が非常に重要になってきている。その例として,近年欧米で先行してニーズが高まっている作業者とロボットの協働作業に対して,当社は従来のMOTOMANの安全機能強化にとどまらず,人とロボットの協働を可能にする人共存形ロボットHC10を開発した。更にIoT に関する取組みの一つとして,ネットワーク技術を活用した異常の早期発見と復旧時間の短縮によってMOTOMAN の稼働率を上げ,生産性を高めるロボットサービスMOTOMAN Cockpit と復旧作業を支援するクラウドサービスMOTOMAN-Cloudの提供を開始し,製品の性能・品質とともにサービス向上による顧客満足度の向上に取組んでいる。
 新たなロボット市場として取組んでいるバイオメディカル分野では,人にとって劇薬でもある抗がん薬を調製するロボットセルDARWIN-Chemo を新たなソリューションとして開発した。
 これらの新製品の開発と供給を支えるため,北九州本社地区の生産体制を再編するとともに,2013年に中国江蘇省常州市で稼働を開始した工場での生産能力を増強するなどの生産力強化にも取組んでいる。また,グローバルに展開したロボットセンタ(計35箇所)から最新技術に関する情報発信や,ソリューション提案を拡大している。
 当社は今後もこのように新たな技術開発と生産,情報発信が一体となり多様化するニーズに応える革新的な製品を提供していく所存であり,当社が提供する製品やサービスがこれまで以上にエンドユーザが抱える問題を解決することに貢献できれば幸甚である。

ロボット市場の展望と当社の取組み

 世界経済の不透明感がぬぐいきれない中にあっても,ロボット市場は着実に成長している。成長の内容は量的な拡大にとどまらず,市場そのもの(ロボットの適用分野)の拡大や,ネットワーク化などの新技術への対応を含むものである。
 当社はロボットメーカとして,ロボット市場の成長と市場要求の多様化・高度化に対応するため,長期及び中期の経営計画に戦略的に位置付けた各種の取組みを進めている。
 本稿では,ロボット市場の世界的な動向とそれによって生じる課題を考察し,更にそれらの課題に対する当社の取組みについて述べている。

世界の産業用ロボット年間設置台数(2015年)

世界の産業用ロボット年間設置台数(2015年)

アーク溶接ロボットMOTOMAN-AR1440

MOTOMAN-AR1440

MOTOMAN-AR1440

 アーク溶接ロボットは自動車製造ライン自動化の主役として,自動車産業の土台の一部を担っている。当社は,これまでアーク溶接に最適なロボット機能を開発し,自動車産業界の要請に応えてきた。
 今回,更なる生産性の向上,溶接条件の調整の簡易化,軌跡精度の向上を図るため,動作速度の高速化,適用範囲の拡大,利便性の向上などを実現したアーク溶接ロボットMOTOMAN-AR1440を開発した。
 本稿では,MOTOMAN-AR1440開発の背景,取組み,及び特長について述べている。

アーク溶接電源MOTOWELD-X350,交流ユニットYWE-XACU

 当社は2002年のアーク溶接用途最適化ロボットMOTOMAN-EAシリーズに始まり,高速化や軌跡精度及び剛性の向上を進め,溶接品質の向上に努め,市場要求に応えてきた。今回,アーク溶接ロボット並びにアーク溶接電源の最大の市場である自動車業界において,車体軽量化を目指した薄板化・アルミ化に対応するため,ディジタルインバータ溶接電源MOTOWELD-X350と交流ユニットYWE-XACU を開発した。
 本稿では,MOTOWELD-X350,YWE-XACU の開発の背景,特長について述べている。

MOTOWELD-X350

YWE-XACU

スポット溶接ロボットMOTOMAN-VS100

MOTOMAN-VS100

MOTOMAN-VS100

 世界的な経済環境の変動や地球温暖化などの自然環境問題の切迫を反映して,自動車産業に変革の波が押し寄せている。自動車生産ラインもその影響を受けて,更なる効率化や環境負荷低減という課題に直面している。
 このような環境変化に対応して,ボディ製造工程では効率,環境,品質をテーマに技術開発が行われ,高効率,低コスト,低エネルギーのライン構築が進められている。当社は,このようなトレンドに対応するため,スポット溶接有効作業範囲を拡張するとともに設置スペースの効率を高めることができる7軸スポット溶接ロボットMOTOMAN-VS100を開発した。
 本稿では,MOTOMAN-VS100の開発の背景及び特長について述べている。

レーザ溶接ロボットシステム

リモートレーザ溶接ロボットシステム

リモートレーザ溶接ロボットシステム

 自動車産業は温室効果ガスの排出削減や省エネ対策の最前線にあって,車体の強度や剛性を向上させながら同時に軽量化を図るという課題に直面している。車体の溶接技術もこれに対応して進化するとともに,多様化している。その中にあってレーザ溶接は,長焦点のレーザ光学系にロボットを組合せたリモートレーザ溶接ロボットシステムの開発によって,一部の精密部品の溶接だけでなく車体の複雑な形状箇所の溶接にも適用されるようになり,今後の進展が期待されている。
 本稿では,2軸/3軸レーザヘッドに高軌跡精度のロボットを組合せて高性能を発揮する,リモートレーザ溶接ロボットシステムの開発の背景及び特長について述べている。

多用途適用型小型ロボットMOTOMAN-GP シリーズ

 産業界におけるロボットの普及が進むにつれ,適用分野も大きく広がってきた。多くの用途に適用でき,生産性を向上するロボットには,小型でスリムであると同時に,可搬質量や動作速度の面で高性能であるという相反する仕様が求められる。併せて,厳しい環境条件にも耐えられることが必要である。
 当社はこれまで小型部品の搬送や組立てなどの分野に小型ロボットを提供し,自動化推進に貢献してきた。今回,多様化する市場の要求に応えるため,構造を刷新し多用途に適用できる新しい小型ロボットを開発した。
 本稿では多用途適用型小型ロボットMOTOMAN-GP シリーズの開発の背景,特長について述べている。

MOTOMAN-GP8

MOTOMAN-GP8

MOTOMAN-GP7

MOTOMAN-GP7

塗装ロボットMOTOMAN-MPX シリーズ

MOTOMAN-MPX3500と左右完全対称構成

MOTOMAN-MPX3500と左右完全対称構成

 塗装作業は作業環境の改善ニーズの代表例として,家電品などの小物用途から自動車などの大物用途まで,自動化,ロボット化が進められている。近年は,作業者の健康維持,地球環境保全,品質向上,コスト削減などの種々の要求に応えるため,対象の用途に適応した経済的で高性能な塗装ロボットのニーズが更に高まっている。
 当社はこれらのニーズに応え,塗装技術の進化や製造工程のコンパクト化などに柔軟に対応できる塗装ロボットをシリーズ化して提供してきたが,今回,従来技術を更に向上させた塗装に最適なロボットとしてMOTOMAN-MPX シリーズを開発した。
 本稿では,この最新の塗装ロボットシリーズの開発の背景,特長について述べている。

人共存形ロボットHC10

HC10

HC10

 人とロボットが協働して安全を保ちながら生産性を高めるため,人協働作業のプロセスの進化に応じた安全技術や,これを盛込んだロボット・安全システムの検討が進められている。当社は,人とロボットが協働して行う作業形態の分類に基づき,形態ごとの最適化を求めて,人共存形ロボット及びそれを利用したシステムの開発に努めてきた。
 本稿では,人とロボットが協働して行う作業形態を分類する考え方をまず説明する。次に,作業形態の「エリア共有」,「ハンドガイド」の実例を挙げ,最後に今回開発した人共存形ロボットHC10の安全技術について述べている。

半導体ウエハ搬送ロボット SEMISTAR-MR124の機種展開

SEMISTAR-MR124

SEMISTAR-MR124

 半導体の製造工程では,クリーン化,ウエハの大口径化,素子の微細化が一段と進んでいる。特にウエハの処理プロセスで使用されるロボットには,顧客の設備が設置される特殊環境条件での使用,高速でクリーンな搬送,狭小スロットへのウエハのローディング・アンローディングなどに対応できる高度な性能が要求されている。
 当社はこれらのニーズに応え,従来の半導体ロボット技術を集大成して更に進化させた半導体ウエハ搬送ロボットSEMISTAR-MR124を製品化したのに続き,顧客の様々な要望に応えるため派生機種を開発した。
 本稿では,SEMISTAR-MR124から派生したこれらの機種展開について述べている。

ロボットコントローラYRC1000

YRC1000

YRC1000

 ロボット市場のグローバル化と拡大に伴って,ロボットコントローラに対する市場要求も高度化している。すなわち,高機能化したロボットを高速かつ高精度に制御するだけでなく,制御盤の小型化,プログラミングペンダントの使いやすさ,更にはネットワーク化対応など一層の向上が求められている。
 本稿では,このような市場要求の高まりに応えて世界最小の小型化と性能向上を両立させるため,今回開発したロボットコントローラYRC1000の開発コンセプト及び特長について述べている。

IoT 活用技術 ~MOTOMAN Cockpit の開発~

 ロボットに代表される産業用機器を製造や作業の現場で個別に運転するだけでなく,ネットワークを介して遠隔地からシステムとして管理することにより,更なる生産性向上を図ることができる。産業用機器のネットワーク化にはインダストリ4.0に代表される最新のトレンドが押し寄せており,当社もネットワークを活用したシステムの構築に取組んでいる。
 本稿では,産業用ロボット分野でのネットワーク技術活用に対する当社の取組みと,その構成要素であるロボットコントローラ機能,IoT を活用した当社ロボットのサービス(MOTOMAN Cockpit),クラウドサービス(MOTOMAN-Cloud)などを述べている。

MOTOMAN Cockpit Platform

MOTOMAN Cockpit Platform

ロボット用センサ技術

MotoSight3D

MotoSight3D

 各種生産工程の自動化を一層加速させるには,ロボットが非定型の作業もこなせるように,自律化を更に進展させる必要がある。そのため,ロボットが外界の状況を正確に認識するセンサの更なる性能向上が不可欠である。
 当社は独自技術により,操作性を向上させた二次元ビジョンパッケージMotoSight2D,バラ積みピッキングを可能にする三次元ビジョンパッケージMotoSight3D や,熟練の技を必要とする精巧なアセンブリ作業をも可能にする6軸力覚制御ユニットMotoFit など,センサ機器を製品化した。
 本稿では,ロボット用センサに対する市場の要求とそれに対する当社の各種センサの特長や適用事例を述べている。

抗がん薬調製支援装置DARWIN-Chemo

DARWIN-Chemo

DARWIN-Chemo

 がん治療の際に行われる化学療法で使用される抗がん薬は正常な細胞に対しては毒性を持つため,医療従事者への抗がん薬の曝露が問題となっている。そのため,ロボットを応用した抗がん薬調製作業の自動化は医療現場の高い期待を集め,社会的意義も非常に大きい。しかし,自動化の実現には曝露対策に加えて,調製作業自体の精度や効率を確保する必要がある。このような背景の下,当社は九州大学病院薬剤部,東京大学医学部附属病院薬剤部,及び日科ミクロン㈱と共同で,抗がん薬調製支援装置DARWIN-Chemo を開発した。
 本稿では, DARWIN-Chemo の開発の背景, 装置構成及び特長,これまでに得られた評価結果などについて述べている。

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